切り取った時間

今年、5月。
マリィからメールが来た。
なんてことはない、「アドレスを変えました」。
私は大抵、変えた人に「登録しました」と返信をする。
なのでいつも通りの行動に、ささやかな期待を加えて返信した。
その後マリィから来た返信は、アルバイトをやめ、恋人と別れたという内容だった。
私は今度暇なときに会って、話をしなぃ?と誘った。
OKが出た。
お互いヒマな日を聞いた。
6月1日。
この日になった。
時間はすぎた。
気づけば6月1日になった。


久しぶりにあったマリィは、少し変わり、あまり変わっていなかった。
半年ほどの時間は、人に変化を与えるには短く、変わらないでいるのには長かった。
高校を卒業して、色んなことがあったようだ。
職場でのこと。恋人とのこと。
愚痴や冗談、他愛のないことを話し続けた。
カラオケに行ったり夕飯を食べたり。話をしたり。
時間はすぐに過ぎていった。
午後2時に会い、終電まで一緒にいた。
楽しかったよ。とても。
嬉しかったよ。とても。
でも。
情けなかった。
手を握ろうと試みたけど、そんな勇気もなくて。
変わりたいと願っていたのに、あと一歩踏み出すことを考えていたのに。
どうしてもその勇気が出なかった。


終電の中、
人の少ない車内のいすに、隣同士で座り、
私はなけなしの勇気を振り絞り、
マリィの肩を抱き、髪をなでた。


踏み出すことはできる。
だから、あとは勇気。
そして、自信と。


また会う約束はしたから。
6月19日。
また会うから。
そのときは、もっと勇気を持とう。
もっと行動にできるように、なろう。
ガンバろう、自分。ガンバれレイ。